ある保護者の方からこんな話を聞きました。
お子さんが所属していたチームで監督からやたらと目の敵にされメンバーから外されるようになった。やめるまではいかなかったけれどラグビーへの意欲が大きく下がってしまった——。
事情のすべてを知っているわけではありません。でもあんなに好きだったラグビーへの気持ちが大人の関わり方ひとつでしぼんでいく。その話を聞いたとき他人事とは思えませんでした。
2026/7/20
ある保護者の方からこんな話を聞きました。
お子さんが所属していたチームで監督からやたらと目の敵にされメンバーから外されるようになった。やめるまではいかなかったけれどラグビーへの意欲が大きく下がってしまった——。
事情のすべてを知っているわけではありません。でもあんなに好きだったラグビーへの気持ちが大人の関わり方ひとつでしぼんでいく。その話を聞いたとき他人事とは思えませんでした。
子どもがラグビーを「好き」「楽しい」と感じる状態を作る。これがコーチの最初の仕事です。
大人の「勝たせたい」「強くしたい」を先行させると子どもの「楽しい」は静かに消えていきます。さっきの子のようにやめてはいなくても心はもうグラウンドにいない。そういう状態は数字にも記録にも残らないから気づきにくい。でも確実に起きています。
勝たせたい気持ちが前に出た日ほど気をつけてください。子どもの楽しいは静かに消えます。
楽しくなくなったラグビーは続きません。「楽しい」は土台です。この土台がなければ技術も戦術もその上には乗りません。
だから私はどれだけ強くしたい気持ちがあってもまず「この子たちは今、ラグビーを楽しめているか」から確認するようにしています。
一方で高いレベルを目指すなら「楽しい」の先にある挑戦が必要です。地味な基礎練習。苦手なスキルの反復。しんどいフィジカル。「楽しいことだけやればいい」という環境ではあるレベルから先には進めません。
正直に言うと、楽しいだけでは越えられない壁もあります。
大事なのは「その地味な積み重ねを、なぜやるのか」を選手が分かっている状態を作ることです。目的が分かって取り組む選手と言われたからやる選手。同じ練習をしても数ヶ月後には差が出ます。
楽しさを守ることとしんどいことに向かわせること。この2つは矛盾しません。楽しいラグビーの中に挑戦の余地を作っていく。それがコーチの仕事です。
強くしようとするときコーチが削るべきは「楽しさ」ではありません。削っていいのは「ぬるさ」のほうです。
ここを取りちがえるとさっきの子のようなことが起きます。厳しくすること自体が目的になる。圧をかけ、外し、追い込む。そうして残るのは強さではなくラグビーを嫌いになりかけた子どもです。
「今日の練習で何を意識するか」「このドリルはなぜやるのか」。選手が自分の言葉で言えること。楽しみながら真剣に課題をクリアしていくこと。それができているチームは楽しさと強さを両方持てます。
コーチが「楽しい」を守りながら「しんどいことに向かう理由」を選手の中に作る。それが長くラグビーを続けられる強い選手を育てるコーチングだと思っています。
あの子の意欲がまた戻ってくることを願いながら。

三原 亮太(りょうたコーチ)
ラグビーの時間 代表
元近鉄ライナーズ。小・中学生専門のプロラグビーコーチ。「モチベーションレベルを高めて、次のステージへ」を信条に、選手と保護者に伴走しています。
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