「子どもに楽しんでほしい」と「もっと強くしたい」。この2つの間で揺れているコーチは多いと思います。厳しくすればラグビーを嫌いにさせてしまう気がする。かといって楽しいだけで終わらせたくもない。
先に結論を言います。コーチが削っていいのは「楽しさ」ではなく「ぬるさ」のほうです。楽しさを守ることとしんどいことに向かわせることは矛盾しません。
自分の練習でも、ふだんはタックルを怖がる子がゲーム形式にしたとたん良い顔で当たりにいけた場面がありました。
この記事を読んでわかること- 楽しさがなければ何も始まらない理由
- 楽しいだけでは越えられない壁
- コーチが守るものと削るものの線引き
この記事を読むと、コーチが何を守り何を削るのかの線引きが分かります。その線引きを持てると子どもはラグビーを好きなまま自分から地味な練習に向かうようになります。長く続けられる強い選手が育っていきます。
「楽しい」がなければ何も始まらない
ある保護者の方からこんな話を聞きました。
お子さんが所属していたチームで監督からやたらと目の敵にされた。だんだんメンバーからも外されるようになった。やめるまではいかなかったけれどラグビーへの意欲は大きく下がってしまった——。
事情のすべてを知っているわけではありません。でもあんなに好きだったラグビーへの気持ちが大人の関わり方ひとつでしぼんでいく。その話を聞いたとき他人事とは思えませんでした。
子どもがラグビーを「好き」「楽しい」と感じる状態を作る。これがコーチの最初の仕事です。
大人の「勝たせたい」「強くしたい」を先行させると子どもの「楽しい」は静かに消えていきます。さっきの子のようにやめてはいなくても心はもうグラウンドにいない。そういう状態は数字にも記録にも残らないから気づきにくい。でも確実に起きています。
りょうたコーチ消えかけていても子どもは言いません。だから練習後の顔と声を毎回見てください。
楽しくなくなったラグビーは続きません。「楽しい」は土台です。この土台がなければ技術も戦術もその上には乗りません。
だから自分はどれだけ強くしたい気持ちがあっても順番を変えません。まず「この子たちは今ラグビーを楽しめているか」を確認します。
楽しいだけでは壁は越えられない
一方で高いレベルを目指すなら「楽しい」の先にある挑戦が必要です。地味な基礎練習。苦手なスキルの反復。しんどいフィジカル。「楽しいことだけやればいい」という環境ではあるレベルから先には進めません。
大事なのは「その地味な積み重ねをなぜやるのか」を選手が分かっている状態を作ることです。目的が分かって取り組む選手と言われたからやる選手。同じ練習をしても数ヶ月後には差が出ます。
楽しいゲームは成長と切り離されたものではありません。小学生のクラスで新しいゲームをやったとき自分はこう伝えました。
「初めてやるゲームは難しくて当たり前。でもこういう楽しいゲームでもいっぱい成長できるところがあるから、考えながらやろう。」
楽しいゲームの中にも考えるところは必ずあります。そこを言葉にして選手に渡すのがコーチの役割です。
楽しさを守ることとしんどいことに向かわせること。この2つは矛盾しません。楽しいラグビーの中に挑戦の余地を作っていく。それがコーチの仕事です。
削っていいのは「楽しさ」ではなく「ぬるさ」
強くしようとするときコーチが削るべきは「楽しさ」ではありません。削っていいのは「ぬるさ」のほうです。
ここを取りちがえるとさっきの子のようなことが起きます。厳しくすること自体が目的になる。圧をかけ、外し、追い込む。そうして残るのは強さではなくラグビーを嫌いになりかけた子どもです。
「今日の練習で何を意識するか」「このドリルはなぜやるのか」。選手が自分の言葉で言えること。楽しみながら真剣に課題をクリアしていくこと。それができているチームは楽しさと強さを両方持てます。
コーチが「楽しい」を守りながら「しんどいことに向かう理由」を選手の中に作る。それが長くラグビーを続けられる強い選手を育てるコーチングだと思っています。
あの子の意欲がまた戻ってくることを願っています。
まとめ:楽しいまま強くなるために
この記事のまとめ- 「好き」「楽しい」はコーチが最初に作る土台。ここが崩れると技術も戦術もその上に乗らない
- 高いレベルを目指すなら「楽しい」の先にある地味な練習が必要になる
- 鍵は「なぜやるのか」を選手が自分の言葉で言えること
- 削るのは「楽しさ」ではなく「ぬるさ」。厳しくすること自体を目的にしない
この線引きを持てると子どもはラグビーを好きなまま地味な練習にも向かっていきます。何年か経ったときグラウンドに残っているのはそういう選手です。
まず明日の練習で一つだけ試してください。メニューを説明するときに「これはなぜやるのか」を一言だけ添える。うまくいかない日があって当たり前です。それでも伝え続けることがコーチの仕事です。