「挨拶をしましょう」「かばんの整理整頓をしましょう」。毎回そう言っているのに選手の表情が変わらない。そんな手ごたえのなさはないでしょうか。
選手の頭にあるのは「それがラグビーと何の関係があるの」という疑問です。関係は直接あります。日常でくり返している行動が試合の一番苦しい場面にそのまま出るからです。人間力を育てることはラグビーを教えることそのものです。
自分も人間力は背中で見せたいと思いながらリスペクトを欠いた言動をしてしまうことがまだあります。
この記事を読んでわかること- 日常の習慣がプレーに出る仕組み
- コーチが先に手本を見せる意味
- スキルと人間力を同時に育てる考え方
この記事では日常の習慣がなぜプレーに出るのか、そしてコーチに何ができるのかを整理します。読み終えるころには「ルールだからやりなさい」と言わずに済むようになります。選手が卒業したあとも残る癖を持たせられるコーチになれます。
人間力は試合の終盤に出る
ラグビーで一番苦しい場面を思い浮かべてください。
試合の終盤。体が疲れきってオフサイドの誘惑に負けそうなとき。判定に納得がいかず感情的になりそうなとき。相手が倒れているのに手を差し伸べられるかどうか。
これはスキルの問題ではありません。習慣の問題です。
「試合の終盤、一番大事なシーンで頭がボーッとしている時に出るのは、無意識でやっていることだけ。だから日頃から意識して、それを無意識にする訓練が必要。」
「挨拶をする」「ゴミを拾う」「人の話を最後まで聞く」。この当たり前を日常で積んできた選手は苦しい場面でも無意識に正しく動けます。
普段からゴミのポイ捨てや小さなルール違反を無意識にやっている選手は、試合でもオフサイドを無意識に犯します。逆に普段から人のことを考えて行動できる選手は、味方のために体を張れます。ラスト1プレーでも走れます。
コーチが教えられるのはグラウンドの中までです。でも人間力はグラウンドの外で育ちます。「時間を守る」「怪我をした仲間を気にかける」「使ったものを元に戻す」。これは練習メニューには入れられません。
りょうたコーチコーチが育てたいのは試合で活躍する選手だけではないはずです。
ラグビーを通して社会に出たときに信頼される人になってほしい。そう願うならグラウンド外の習慣にも目を向ける必要があります。それが積み重なった選手はチームの空気そのものを変えていきます。
コーチが先に手本を見せる
大切なのはコーチ自身が手本になることです。
選手に挨拶をさせたいならまずコーチが先に挨拶する。グラウンドを使い終わったら率先してゴミを拾う。遅刻したら素直に謝る。当たり前のことですがコーチという立場になるとつい忘れてしまいます。
自分は選手にこう伝えています。
「来たら挨拶しましょう。かばんの整理整頓もちゃんとやりましょう。これはここのルールだからやるということじゃなくて、人としてしっかりできるように、ここを卒業してもできるような癖づけをやっていきましょう。コーチからも絶対挨拶する」
大事なのは「ここのルールだから」で終わらせないことです。理由を「人としてできるようになるため」に置くと選手の受け取り方が変わります。そして最後に自分の約束を足します。
「コーチに会ったら挨拶」と言わせるのではなく自分から自発的に挨拶できることが大事です。誰でも当たり前にする行動こそコーチが率先してやって見せる。小中学生にはそれが一番の教育になります。
りょうたコーチ立場が上になるほど当たり前を忘れます。私も遅れたときは素直に謝るようにしています。
コーチがミスを責めれば選手も仲間のミスを責めるチームになります。逆にコーチがミスを許して次への挑戦を促せば選手同士もカバーし合えるようになります。コーチの日ごろのふるまいがそのままチームに伝わっていきます。
スキルと人間力は同時に育てる
人間力を育てることとラグビーの技術を磨くこと。どちらかを先に選ぶものではありません。
挨拶や思いやりを習慣にしながら技術も磨いていく。その両方が積み重なった選手が最後は一番強くなります。そして一番長くラグビーを楽しめる選手になる。私はそう思っています。
コーチが教えるのはラグビーのスキルだけではありません。コーチという仕事の範囲はもっと広いのです。
この記事のまとめ- 試合の終盤に出るのは、無意識でやっていることだけ
- 日常の小さなルール違反は、試合のオフサイドとして出る
- 理由は「ここのルールだから」ではなく「人としてできるように」
- 当たり前の行動ほど、コーチが先にやって見せる
スキルと人間力の両方が育った選手は、どのチームに行っても応援される選手になります。ラグビーを離れたあとも残るものを渡せます。指導の範囲がそこまで広がると、日々の声かけの意味も変わってきます。
明日の練習は、自分から選手に挨拶することから始めてみてください。言葉で伝えるより先にやって見せる。それだけで選手の受け取り方は変わります。