練習でミスが起きた瞬間「今のはこうすればよかった」とすぐ口を出していませんか。
教えている内容は間違っていない。それなのに試合になると選手はこちらの顔を見て指示を待つ。コーチが育てたいのはコーチがいなくてもプレーできる選手のはずです。
答えを渡す前にできることがあります。一つは問いかけて選手の口から答えを出させること。もう一つは答えが選手から出てくる練習の形にすることです。
自分はミスした選手に「今のは惜しかったな、次はどこに投げたらいい?」と聞くところから始めています。
この記事を読んでわかること- 答えを先に言うと思考が止まる理由
- 選手の口から答えを出させる問いかけ
- 答えが出てくる練習の形の作り方
この記事では答えを渡す前にできることを3つ順番にまとめます。読み終えるころには、コーチが黙っていても選手同士で話し出す練習の作り方が見えてきます。どれも明日の練習からすぐ試せるものばかりです。
答えを先に言うと思考が止まる
ミスした直後にすぐ答えを言うと選手の思考はそこで止まります。
「コーチが教えてくれる」。そう感じた選手は自分で考えるのをやめます。最初から答えを教えると選手は正しいプレーを覚えるのではなくコーチの指示を待つようになります。
これはグラウンドで最も危ない状態のひとつです。
だから答えを言う前に一つ問いかけます。中学生のタックル練習では毎ラウンドの終わりに「ずれた人?」「その原因は?」「じゃあ次どうする?」と聞いています。
返ってくるのは「足が止まってた」「頭が下がってた」という言葉です。原因はコーチが言わなくても選手の口から出てきます。
「ただミスして終わってるだけやったら、次もう一回同じミスが起こる」
振り返って次どうするかまで考えてもう一度チャレンジする。この繰り返しでやっと積み上がっていきます。
自分で出した答えは長く残ります。コーチから与えられた答えよりずっと長く。
失敗した選手を責めるのではなく失敗から何を学んだかを引き出す。このちがいが成長のスピードに大きな差をつけます。
「質問」は聞く耳を作る入り口
問いかけにはもう一つ効果があります。選手の耳が開くことです。
知っておきたい前提があります。人は基本的に他人の話を聞いていません。とくに子どもは普通に話しかけても右から左へ流れていきます。
問いかけはその状況を変えます。「あ、このコーチは自分に聞いてくる」。そう思った選手は自然に耳を傾けます。質問は選手を話に引き込む入り口でもあるのです。
りょうたコーチ問いかけて出てきた答えは否定しないでください。否定を入れると次から出てこなくなります。
コーチが一方的に教える時間より選手が口を開いている時間のほうがコーチングは機能しています。
答えが出てくる練習の形を作る
問いかけても言葉が出てこないときは練習の形そのものを変えます。
言葉で伝えるより目的の行動が起きる環境を作るほうが早いからです。
4・5年生のクラスでパスのタイムを測る練習をしました。いつもはチーム対抗です。この日は「今日はチームの対抗戦じゃなくて、チームの協力戦でやります」と伝えました。
まず全力で1本測って自分たちの記録を作る。30秒だけ話し合う。そのあと6分間で自分たちの記録を超えにいく。やったのはそれだけです。
結果は4チームすべてが記録を更新しました。話し合いで子どもたちから出たのは「チームで走る」「取りやすいパスをもらう」「声を出す」という言葉です。
どれもコーチが言う前に選手から出てきたものです。比べる相手を他のチームから30秒前の自分たちに変えただけでした。
一つだけコツがあります。最初の記録を測るときに「あとで挑戦するよ」と先に言わないことです。先に言うと子どもは1本目を手加減します。一生懸命やった記録を超えられるかどうかに意味があります。
「聞きに行ける関係」を先に作る
答えを渡さないコーチングには土台が必要です。選手が自分から聞きに来られる関係です。
試合に出られない理由をコーチや環境のせいにしない。「自分に何が足りないか」を考えてコーチに聞きに行ける。そんな選手を育てることがジュニア育成の大事な目標のひとつです。
そのためにコーチは練習前後の雑談を大切にします。ラグビーと関係ない話をする時間が「この人には聞ける」という関係を作ります。
小学校高学年から中学生の選手は「その言葉が正しいか」より「その人を信じられるか」で判断します。どれだけ正しいアドバイスをしても信頼がなければ届きません。技術のフィードバックより先に話しかけやすい空気が必要です。
まとめ:明日の練習で変えること
選手が「自分で考えて、迷ったらコーチに聞く」。その習慣を持てたときコーチの仕事は一段上のステージに進んでいます。
この記事のまとめ- 答えを言う前にまず一つ問いかける
- 原因と次の一手を選手の口から出させる
- 言葉で出てこないときは練習の形を変える
- 比べる相手を他のチームから過去の自分たちにする
- 練習前後の雑談で聞きに行ける関係を先に作る
コーチが黙っている時間が増えるほど選手同士の会話は増えます。試合の途中でも自分たちで話し合って修正できるチームに近づいていきます。
明日の練習では最初の1回だけ試してみてください。ミスが起きたとき答えを言う前に「今の原因は?」と聞く。まずはそれだけで十分です。