コーチをしていると「答えを教えたくなる」衝動があります。
選手がつまずいている場面を見るとすぐ「こうすればいい」と言いたくなる。それ自体は悪いことではありません。でもそれが当たり前になった選手は試合中に自分で判断できなくなります。
コーチが育てたいのはコーチがいなくてもプレーできる選手のはずです。
答えを渡す前にコーチができることが一つだけあります。
2026/7/20
コーチをしていると「答えを教えたくなる」衝動があります。
選手がつまずいている場面を見るとすぐ「こうすればいい」と言いたくなる。それ自体は悪いことではありません。でもそれが当たり前になった選手は試合中に自分で判断できなくなります。
コーチが育てたいのはコーチがいなくてもプレーできる選手のはずです。
答えを渡す前にコーチができることが一つだけあります。
練習中、選手がミスをした直後に「今の、こうすればよかった」とすぐ言っていませんか?
その瞬間、選手の思考は止まります。「コーチが教えてくれる」と感じると選手は自分で考えるのをやめてしまうのです。
大切なのは答えを言う前に一つ問いかけることです。
「今の、どうしようと思ってた?」
この一言を先に入れるだけで選手の思考が動き出します。自分で出した答えは長く残ります。コーチから与えられた答えよりずっと長く。
試合中の状況判断は失敗の経験から育ちます。最初から答えを教えると選手は「正しいプレー」を体で覚えるのではなく「コーチの指示を待つ」ようになる。
これはグラウンドで最も危ない状態のひとつです。
あえて失敗させて「なぜうまくいかなかったか」を自分で考えさせる。その積み重ねが判断の速さと正確さを高めていきます。失敗した選手を責めるのではなく失敗から何を学んだかを引き出す。このちがいが成長のスピードに大きな差をつけます。
知っておきたい前提があります。人は基本的に他人の話を聞いていません。とくに子どもは普通に話しかけても右から左へ流れていきます。
問いかけはその状況を変えます。「あ、このコーチは自分に聞いてくる」。そう思った選手は自然に耳を傾けます。質問は選手を話に引き込む入り口でもあるのです。
人は思っている以上に人の話を聞いていません。だからまず問いかけから入ってみてください。
コーチが一方的に教える時間より選手が口を開いている時間のほうがコーチングは機能しています。
「自分で考える力」と並んで大切なのが「コーチに聞きに行ける力」です。
試合に出られない理由をコーチや環境のせいにしない。「自分に何が足りないか」を考えてコーチに聞きに行ける。そんな選手を育てることがジュニア育成の大事な目標のひとつです。
そのためにコーチは練習前後の雑談を大切にします。ラグビーと関係ない話をする時間が「この人には聞ける」という関係を作る。技術のフィードバックより先に話しかけやすい空気が必要です。
選手が「自分で考えて、迷ったらコーチに聞く」。その習慣を持てたときコーチの仕事は一段上のステージに進んでいます。

三原 亮太(りょうたコーチ)
ラグビーの時間 代表
元近鉄ライナーズ。小・中学生専門のプロラグビーコーチ。「モチベーションレベルを高めて、次のステージへ」を信条に、選手と保護者に伴走しています。
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